私が抜け毛の恐怖を初めて味わったのは、結婚式を控えた二十代後半のことでした。一生に一度の晴れ舞台、どうしても憧れのドレスを綺麗に着こなしたくて、私は極端な糖質制限とカロリー制限を行うダイエットに踏み切りました。朝はスムージーだけ、昼は春雨スープ、夜はサラダのみという生活を二ヶ月ほど続けた結果、体重は目標通り五キロ落ちました。しかし、式の準備に追われていたある日、シャンプーをしているときに手に絡みつく大量の髪の毛に気づいたのです。最初は疲れのせいかと思っていましたが、日に日に抜け毛の量は増え、ドライヤーをかけた後の洗面所の床は黒い髪で埋め尽くされるようになりました。鏡で見ると、明らかに分け目が広がり、髪全体のボリュームがなくなり、パサパサと乾燥して艶も失われていました。痩せて綺麗になるはずが、髪は老婆のようにスカスカになり、肌も荒れてボロボロになってしまったのです。美容師さんに相談すると、「急激なダイエットで栄養不足になり、体が生命維持に関係のない髪の毛への栄養供給をストップさせてしまったんですね」と言われました。その言葉にハッとさせられました。私は美しさを求めていたはずなのに、自らの手で美しさを破壊していたのです。式が終わった後、私は髪を取り戻すために食生活を根本から見直すことを決意しました。まずは、極端に抜いていた炭水化物を適度に戻し、髪の主成分であるタンパク質を意識的に摂るようにしました。鶏のささみ、納豆、卵、そして亜鉛を含む牡蠣やレバーを積極的にメニューに取り入れました。また、サプリメントだけに頼るのではなく、噛んで食べることを重視しました。咀嚼することで消化吸収が良くなり、ストレス解消にもつながると知ったからです。体重が少し戻ることへの恐怖はありましたが、それ以上に髪を失う恐怖の方が勝っていました。栄養バランスのとれた食事に戻して三ヶ月ほど経った頃、ようやく抜け毛が減り始めました。そして半年後には、生え際から短く元気なアホ毛がたくさん生えてきているのを確認できました。あの時の安堵感は忘れられません。一年が経つ頃には、以前のような艶とコシが戻ってきました。この経験から私が学んだのは、健康を犠牲にした美しさは脆く、長続きしないということです。髪は食べたもので作られる。この当たり前の事実を、身を持って痛感しました。もし今、無理なダイエットをしている人がいるなら、どうか止めてください。あなたの髪と体は、あなたが口にする栄養を待っているのです。