「最近、抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームが減ってきた」。こうした薄毛のサインは、実は「ヘアサイクル(毛周期)」の乱れが根本的な原因となっています。特に、男性に最も多い薄毛のタイプであるAGA(男性型脱毛症)は、まさにこのヘアサイクルの乱れそのものと言える疾患です。健康なヘアサイクルでは、髪の毛が太く長く成長する「成長期」が2年から6年ほど続きます。しかし、AGAを発症すると、男性ホルモンなどの影響によって、この最も重要な成長期が、わずか数ヶ月から1年程度にまで短縮されてしまうのです。これは、髪の毛にとって致命的な事態を意味します。本来であれば、数年かけてじっくりと太く、コシのある髪に成長するはずだったものが、まだ細く頼りない産毛のような状態のうちに、成長を強制的にストップさせられてしまうのです。そして、あっという間に退行期・休止期へと移行し、抜け落ちていってしまいます。これが、AGAの進行によって「抜け毛が増えた」と感じるメカニズムです。抜け毛の本数自体が爆発的に増えているというよりは、本来抜けるべきではなかった、まだ若い成長途中の髪の毛が、次々と抜けてしまっている状態なのです。さらに、成長期が短くなることで、頭皮にある髪の毛全体に占める「成長期」の髪の割合が減少し、代わりに「休止期」の髪の割合が増えていきます。成長期の太い髪が減り、細く短い髪ばかりになると、当然ながら髪全体の密度は低下し、ボリュームもダウンします。これが、「髪が薄くなった」「地肌が透けて見える」と感じる原因です。つまり、薄毛とは、毛穴の数が減ってしまったわけではなく、ヘアサイクルの「成長期」が短縮されることで、太く長い髪の毛が育たなくなり、細く短い髪の毛の割合が増えてしまった状態のことを指すのです。この乱れたヘアサイクルを、いかにして正常な状態に戻していくか。それこそが、薄毛治療の最大のテーマとなります。