毛髪再生医療の世界は日進月歩で進化を続けており、現在では「自家培養」というキーワードが大きな注目を集めています。これは、患者自身の組織から採取した細胞を、特殊な施設(CPC:細胞加工施設)で培養して増やし、それを再び患者の頭皮に戻すという最先端の治療法です。これまでの成長因子注入療法では、既製品の製剤や、血液から抽出した成分を濃縮して使用していましたが、自家培養技術を用いることで、治療に必要な有効成分や幹細胞そのものを、必要な量だけ爆発的に増やして投与することが可能になります。いわば、自分の体の再生工場をフル稼働させるようなものです。例えば、真皮毛根鞘細胞や毛乳頭細胞といった、髪の形成に直接関わる細胞を培養して移植する研究や臨床応用が進んでいます。これにより、単に既存の毛を元気にするだけでなく、毛包を新たに形成したり、ヘアサイクルを強力にリセットしたりする効果が期待されています。自分の細胞を使うため、安全性は極めて高く、倫理的な問題もクリアされています。また、他人の組織由来の製剤を使うことに抵抗がある人にとっても、心理的なハードルが低いという利点があります。この技術がさらに洗練されれば、一度の採取で長期間にわたって治療を継続できるようになったり、より重度の脱毛症に対しても劇的な改善が見込めるようになったりするでしょう。もちろん、高度な培養技術と厳格な管理体制が必要となるため、現時点では実施できる施設は限られており、費用も高額になる傾向があります。しかし、テクノロジーの普及に伴い、コストは徐々に下がっていくことが予想されます。再生医療等安全性確保法という法律の下、国への届出がなされた医療機関でのみ実施が許可されている点も、患者にとっては安心材料の一つです。自分の細胞が持つ無限の可能性を信じ、科学の力で髪を蘇らせる。そんなSFのような話が、もはや夢物語ではなく、現実の選択肢として私たちの目の前にあるのです。最前線の技術を知ることは、薄毛という悩みを解決するための視野を大きく広げてくれるはずです。
自分の細胞で髪を蘇らせる自家培養などの毛髪再生最前線