「最近髪が抜けるから、高い育毛シャンプーに変えてみようかな」。多くのお客様からこのような相談を受けますが、プロの美容師としての回答は「シャンプーを変えるだけでは、根本的な抜け毛は止まりません」という少し厳しいものになります。もちろん、シャンプー選びは非常に重要です。しかし、シャンプーの主目的はあくまで「頭皮と髪の汚れを落とすこと」であり、発毛させる薬ではないのです。市販のシャンプーの中には洗浄力が強すぎるものがあり、これらは必要な皮脂まで洗い流して頭皮を乾燥させたり、逆に皮脂の過剰分泌を招いて環境を悪化させたりすることがあります。こうした頭皮トラブルが原因で抜け毛が増えている場合(いわゆる頭皮環境悪化型の脱毛)には、アミノ酸系などの優しいシャンプーに変えることで、抜け毛が減る可能性は十分にあります。しかし、多くの成人男性を悩ませるAGA(男性型脱毛症)や、女性のホルモンバランスによる脱毛、あるいはストレスや栄養不足による内部要因の脱毛に対しては、シャンプーだけで対抗するのは不可能です。これらは体の内側のメカニズムに起因しているため、表面を洗う洗剤を変えたところで、原因そのものを断つことはできないからです。シャンプーに期待すべき役割は、「抜け毛を治す」ことではなく、「髪が育ちやすい土壌(頭皮環境)を整える」ことです。健康な頭皮を作ることは、育毛剤の浸透を良くしたり、これから生えてくる髪を健やかに保ったりするための基礎工事になります。ですので、シャンプー選びの正解は「攻め」ではなく「守り」です。育毛効果を謳う高価な成分が入ったものよりも、自分の頭皮タイプ(乾燥肌か脂性肌か)に合い、余計な刺激を与えない低刺激なものを選ぶことが最優先です。そして、シャンプーを変えること以上に大切なのが「洗い方」です。予洗いをしっかり行い、爪を立てずに優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないように徹底的に流す。この基本動作を丁寧に行うだけで、頭皮環境は劇的に改善します。シャンプーは魔法の薬ではありませんが、毎日のケアを正しく行うことで、抜け毛予防の強力なサポーターにはなり得ます。過度な期待はせず、正しい知識を持って使いこなすことが大切です。
シャンプーを変えれば抜け毛は止まるのかプロの美容師が回答