「気づくと無意識に髪を抜いてしまっている」「抜く時の痛みが快感になり、やめられない」。もしあなたが自分で自分の髪を抜いてしまい、それによって薄毛になっているのなら、それは単なる癖ではなく「抜毛症(トリコチロマニア)」という心の病気かもしれません。主に小学生から思春期の子供や若い女性に多く見られますが、成人の発症も珍しくありません。原因は完全には解明されていませんが、強いストレスや不安、緊張、退屈感などを解消するための代償行為として現れることが多いとされています。髪を抜くことで一時的に心の緊張が解け、安心感を得てしまうため、やめたくてもやめられない依存症のような状態に陥ってしまうのです。抜毛症の特徴は、利き手側の頭髪や、手が届きやすい特定の部分が不自然な形でハゲていることです。本人は「抜いてはいけない」と分かっているため、ハゲた部分を隠そうとしたり、抜いた後に強い罪悪感や自己嫌悪に襲われたりします。この自己嫌悪が新たなストレスとなり、また抜いてしまうという負のループが形成されます。家族や周囲の人が「やめなさい」と叱責したり、無理やり手を止めさせたりすることは、逆効果になる場合が多いです。本人の意志の弱さの問題ではなく、心のSOSだからです。治療には、皮膚科と精神科(心療内科)の連携が必要になることが多いです。皮膚科で頭皮のケアをしつつ、精神科で認知行動療法や薬物療法を行い、抜毛衝動の裏にあるストレスの原因を探り、別の対処法(リラックス法や、衝動が起きた時に別の動作をするなど)を身につけていきます。また、ウィッグや帽子を使って物理的に髪に触れないようにする工夫も有効です。抜毛症は決して恥ずかしいことではありません。多くの人が同じ悩みを抱えています。まずは自分が病気であることを認め、自分を責めるのをやめること。そして専門家の助けを借りて、心の絡まった糸を解いていくことが、回復への第一歩となります。
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