薬剤師として薬局のカウンターに立っていると、患者さんの安全を守る上で「飲み合わせ(相互作用)」のチェックが、いかに重要であるかを日々痛感させられます。特に、ミノキシジル内服薬のような、専門のクリニックで自費で処方される薬は、私たちが普段、保険診療の履歴から把握している情報には現れてこないため、患者さんご自身から教えていただかない限り、その存在を知ることができません。これが、思わぬ飲み合わせのリスクを生む温床となることがあるのです。先日も、こんなことがありました。高血圧で定期的に通院されている患者さんが、風邪をひいたとのことで市販の風邪薬を買いに来られました。いつものように「他に何かお薬は飲んでいませんか?」とお尋ねすると、「病院の薬だけだよ」とのお返事。しかし、念のためお薬手帳を拝見すると、そこには書かれていないメモ書きが。「AGAクリニック、ミノキシジル…」。詳しくお話を伺うと、最近、薄毛治療を始められたとのこと。もし、この申告がなければ、私たちは彼が血圧を下げる作用のある薬を二重に飲んでいることを知らずに、風邪薬をお渡ししていたかもしれません。幸い、大きな問題に繋がる成分ではありませんでしたが、ヒヤリとした瞬間でした。AGA治療は、非常にプライベートな悩みであるため、他の病気の診察時や、薬局で薬剤師に話すことに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。そのお気持ちは、よく分かります。しかし、あなたの健康を守るためには、その情報が不可欠なのです。私たち薬剤師には守秘義務があります。患者さんの情報を外部に漏らすことは決してありません。お薬手帳は、あなたの命を守るための重要なツールです。AGAクリニックで処方された薬も、必ず手帳に記載するか、シールを貼っておいてください。そして、病院や薬局では、必ずその手帳を提示する習慣をつけてください。私たち薬剤師は、薬のプロフェッショナルとして、あなたの安全な治療をサポートするチームの一員です。どうか、私たちを信頼して、すべての情報をお伝えいただきたいと思います。