私は五十代に入った頃から、長年の白髪染めが原因か、髪がどんどん細くなり、地肌が透けて見えることに深刻な悩みを抱えていました。毎朝、鏡を見るたびにため息をつき、分け目をどうにかして隠そうと必死でした。友人との旅行で撮った写真に写る、ぺたんこの自分の髪を見て愕然としたこともあります。そんな時、通っていた美容室のスタイリストさんから「一度、ヘナを試してみませんか?」と勧められたのです。正直、ヘナには「時間がかかる」「オレンジ色になる」という漠然としたイメージしかなく、半信半疑でした。しかし、「化学的なダメージから頭皮と髪を解放してあげるだけでも、きっと変わりますよ」という言葉を信じ、挑戦してみることにしたのです。初めてのヘナは、確かに時間がかかりました。植物の独特な香りに包まれながら、一時間ほど放置。仕上がりは、白髪が優しいオレンジブラウンに染まり、想像していたよりも自然な色合いでした。しかし、その日は髪が少しゴワゴワするような感覚があり、「これが本当に良いのだろうか」と不安になったのを覚えています。これが、いわゆる「ヘナショック」だったと後から知りました。しかし、スタイリストさんの「三回は続けてみてください」という言葉を信じ、月に一度のペースでヘナを続けました。すると、三回目を終えた頃、明らかな変化に気づいたのです。ドライヤーで髪を乾かしていると、根元がふんわりと立ち上がり、髪一本一本に力強さが戻っているのを感じました。ゴワつきはすっかり消え、むしろ自然なツヤとハリが出てきたのです。半年後には、あれほど気にしていた分け目の地肌も、髪のボリュームアップのおかげでほとんど気にならなくなっていました。何より嬉しかったのは、髪に自信が持てたことで、気持ちが前向きになったことです。おしゃれが楽しくなり、人に会うのも億劫でなくなりました。ヘナは、私の髪を元気にしてくれただけでなく、沈んでいた心まで染め直し、明るい色に変えてくれた、まさに人生の転機となる出会いだったのです。