ミノキシジルと他の薬との「飲み合わせ」を心配する。それは、安全に治療を受けたいと考える、至極まっとうな感覚です。しかし、その一方で、クリニックでの正規の処方を避け、安さを求めてインターネットで海外製のミノキシジル内服薬を「個人輸入」する人がいます。この行為は、「飲み合わせ」を心配する以前の、遥かに重大で根源的なリスクを内包していることに、私たちは気づかなければなりません。個人輸入で薬を手に入れる際、まず考えなければならないのは、「その薬は、本当に本物か?」という点です。正規の流通ルートを経ない個人輸入品の中には、悪質な業者が製造した「偽造品」が紛れ込んでいる可能性が常に付きまといます。有効成分であるミノキシジルが全く含まれていない偽の薬や、表示されている用量とは異なる量の成分が含まれている粗悪品、最悪の場合、人体に有害な不純物が混入しているケースさえ報告されています。あなたは、製造元も、品質管理の状態も全く分からない、正体不明の錠剤を、毎日自分の体に入れ続けることができますか。仮に、幸運にも本物のミノキシジルが手に入ったとしましょう。しかし、問題はそれだけではありません。医師の診察という、安全のための最も重要なプロセスが、完全に抜け落ちています。ミノキシジルは血圧に作用する強力な医薬品です。あなたに、心臓や肝臓、腎臓の疾患など、ミノキシジルを服用してはいけない禁忌事項はないでしょうか。それを判断できるのは、専門的な知識を持った医師だけです。医師の監督なしに服用を始め、もし動悸やめまい、重篤な肝機能障害などの副作用が現れた時、あなたは誰に相談しますか。個人輸入による健康被害は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外です。すべての責任は、あなた自身が負うことになります。「飲み合わせ」を心配するということは、少なくとも、自分が飲んでいる薬の成分と量が正確であることが大前提です。しかし、個人輸入品にはその前提すらありません。目先の数千円を節約するために、取り返しのつかない健康被害という、計り知れない代償を支払う。それが、個人輸入の本当の姿なのです。
飲み合わせ以前の問題?個人輸入ミノキシジルの闇